動脈硬化症における糖質脂質代謝障害にかんする研究
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概要
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生体では脂質代謝は糖質代謝と不可分の関連を保ちながら営まれている.動脈硬化症の両代謝の異常を知る目的で動脈硬化症,糠尿病,健者に50%ブドウ糖40m1の静脈内負荷を行ない耐糖能をK値で示し,併せて血漿FFAの変動パターンを観察した. K<1.00の出現頻度は若年健者で全くみられないのに比べ高年健者では13%に認めた.動脈硬化症では健者と比較してK値は糖尿病ほどではないが低下する傾向を認めた.若年健者では,ブドウ糖静注後FFAが一度下降2時間後にほぼ負荷前値へ復するパターンの出現頻度は75%の高率である.高年健者では47.4%と減少する代りに負荷前値への回復遅延するパターンが28.9%に認められ,動脈硬化症では高年健者と差がないのに比べ若年健者で2.3%と低率であるのが注目される.この様に加令現象と動脈硬化症とを明確に区別することは困難で動脈硬化の発症に加令の影響が重視される.また動脈硬化症ならびに糖尿病では,ブドウ糖静注後FFAは殆ど変動を示さないパターンが増加した.健者と疾患群を一括すると空腹時FFA値とK値の間に負の相関を認めた.ブドウ糖静注によるFFAの下降度はK値と相関を示さず,空腹時FFA値と相関を認めるため,解糖には無関係と考えられる少量のインスリン分泌が直接FFAの低下に関与する可能性,脂肪組織内FFA濃度によつて,ホルモン感受性リパーゼに基づく水解が自己調節され,血漿FFAが変動する可能性等が示唆される.
- 社団法人 日本内科学会の論文