肝内胆管欠損症の病理組織像 : 1剖検例と先天性胆道閉鎖症との病理学的比較
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概要
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1歳7カ月,女児.生後3日目より強度の黄疸が出現し,以後死亡まで持続.臨床的には先天性肝外胆道閉鎖症と診断された.生後2カ月半の肝生検では存在していた肝内胆管が剖検では完全に消失していた症例を肝内胆管欠損症として報告する.肝生検では14個中7個のグリソン氏鞘に胆管は存在していたが,ほぼ正常の胆管上皮から変性・破壊あるいは瘢痕化しているものまで種々の段階の障害像がみられた.肝線維化,偽胆管の増生は無い.剖検では肝外胆道系は低形成ではあるが開存していた.肝内胆管は完全に消失しその痕跡すら認めない.肝線維化は軽度で小葉中心部が主である.偽胆管の増生は全く無い.この様な所見は先天性肝外胆道閉鎖症の組織像とは明らかに異なることを指摘した.肝内リンパ管の拡張が著明で胆汁の排泄路として重要な役割を演じていることが示唆された.病因として肝の組織像,胆管障害像などから何らかの感染が推された.<BR>近年Alagille症候群,paucity of the intrahepatic bile ductとして注目される疾患に本症の肝組織像は一致する.本邦第1例目の剖検報告例と思われる.
- 社団法人 日本肝臓学会の論文
著者
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寺尾 英夫
長崎大熱研病理
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寺尾 英夫
長崎大学・熱帯医学研究所・病理
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板倉 英世
長崎大学・熱帯医学研究所・病理
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関根 一郎
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部原研病理
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松田 静宗
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部小児科
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辻 芳郎
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部小児科
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大宮 俊憲
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部第2外科
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野田 剛稔
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部第2外科
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土屋 涼一
長崎大学・熱帯医学研究所・医学部第2外科
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