構造としてのブロカ失語-失語症2音節語検査による症例研究-
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概要
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1ブロカ失語患者に「失語症2音節語検査」を改善の諸段階に応じて計3回にわたり実施し,以下の結果を得た.(1) 重度期には患者は2音節単語の理解・表出の両面において記号母の韻律的および継起的構造を捉えることができなかった.(2) 中度期には韻律的構造を捉えることができた.(3) 軽度期には継起的構造を捉えることができたが継起的構造を操作することには障害があった.各期を通じて無意味2音節の順序の操作は一貫して困難であった.以上から,本ブロカ失語患者は理解・表出の両面において単語の記号母の韻律的・継起的構造を捉える能力および継起的構造を操作する能力に関する一つの構造的障害を持ち,この構造は失語の改善に伴って一定の順序で変化したことが示された.さらに文レベルの理解・表出の障害や聴覚的把持力の障害の改善過程は,同じ構造的変化の過程の現れと考えられた.そこで本ブロカ失語は一つの可変的な構造的障害であったと結論された.