失行を伴った1重度失語症例のジェスチャー獲得過程
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概要
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皮質下領域の損傷によって失行を伴う重度ブローカ失語を生じた1症例に対し,動作および物品を描いた絵のジェスチャーによる表現能力を形成することを目指し,訓練を行った.その訓練過程で観察された事実にもとづき,ジェスチャーの獲得過程,ジェスチャー表出を促進する条件について考察し,ジェスチャー障害と失行の関係について検討した.本症例において,ジェスチャーは以下の段階をへて獲得された.(1)試行錯誤的な自発的動作の出現.(2)自己の身体部位を手がかりにした動作の喚起.(3)粗大な動作パターンの獲得とそのレパートリーの増加.(4)分化し,柔軟性を持ったジェスチャー表現の完成.これらの段階は階層性を持ち,前段階の成立が土台となって次の段階が形成される関係にあると考えられた.ジェスチャー表出を促進するために用いた音声言語による手がかりは,動作との関係が具体的で直接的であるほど効果が高かった.しかし,対象の用途に注目させるなどの抽象的なレベルの手がかりにも一定の効果があった.これは本症例のジェスチャー障害の問題が表現のプランニングのレベルにも存在していることを示すものと考えられ,従来の失行概念のみでは説明しきれない側面を持つ.
著者
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