雑音負荷語音明瞭度検査法の臨床的研究
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概要
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I 研究目的有意2音節単語を用いての雑音遮蔽下語音明度検査が諸種の聴覚障害耳においてどのようなあらわれ方をするかを検討し,あわせてそれを後迷路性難聴の細別診断に用い得るか否かを検討した.II 研究方法難易度の等しい有意2音節単語を用い無歪語音明瞭度検査用語音表,1表20語,5語音表を作成し,つづいて同じく1表20語の語音表4表を作成し,中2表づつにS/N比0dB,及び10dBになるようにelectrical mixerを用いて白色雑音を混合して雑音負荷語音明瞭度検査用テープを作成した.検査は純音オージオメトリーを施行した後に上記検査用テープの1部にてMCLレベルを片耳づつで決定しMCL明瞭度を測定した.全検査同レベルにて無歪語音明瞭度検査,並びに雑音負荷語音明瞭度検査を施行し,両者を比較検討した.III 研究結果白色雑音負荷明瞭度を正常者10例20耳,諸種難聴者95例150耳について測定した結果は1) 正常耳は無歪明瞭度は100%,遮蔽明瞭度はS/N比10dBで96.0%,0dBで68.3%であつた.2) 内耳性難聴例56耳では(上記の順に)それぞれ92.9%,76.2%,38.0%,頭部外傷例44耳では92.0%,76.4%,36.9%,老人性難聴例26耳では87.9%,62.9%,36.6%,後迷路性難聴例24耳では76.3%,54.3%,29.4%であつた.3) 無歪明瞭度と遮蔽明瞭度との関係を検討すると,無歪明瞭度が悪いもの程遮蔽明瞭度の悪化の程度が著るしい傾向があつた.4) その悪化の程度は(i)正常耳,(ii)内耳性難聴例及び頭部外傷例,(iii)老人性難聴例及び後迷路性難聴例の順に著明となる傾向が認められた.5) 上記の結果より雑音遮蔽下の明瞭度悪化は後迷路性難聴の診断に用い得ると考えられた.6) しかし,その実際及び詳細については今後個々の症例についての具体的な検討を経なければならない.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文