聴性反応時間の基礎的研究
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概要
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正常被検者を対象として,種々の音刺激に対する聴性反応時間を測定した.その日的は,聴性反応時間の基本的性質の追求並びにその臨床応用への可能性の検討である.方法種々の音刺激を右耳に与え,それが聴えたら直ちに右手に持つたマイクロスイッチを押すことによつてその時間を測定する.その瞬間はpoststimulus time histogram (100回試行)として,その最多頻度呈示個所の時間を求め,反応時間と規定した.結果(1) いかなる刺激方法を用いても,単純反応時間(音が聴えたら押すという単純な反応に要する時間)はすべて150〜350msec.の間に分散しており,大多数は200〜250msecの中にある.(2) 刺激音として0.25,1,4KHzの三周波数純音を用いた場合,その三者間に於ける反応時間の差はない.(3) 刺激音の強さが弱い時は反応時間は長く,強くなるに従つて短かくなるが音圧がSL4 40dB以上になると略一定となる.(4) 年令別では青年群,高令者群,小児群の順に反応時間が延長する.(5) 反応時間の練習効果は,青年群,小児群に於いて認められず,高令者群に於いては初期にのみ認められる.(6) Off反応時間はon反応時間と同じであるが,バラツキが若干大きい.(7) 反応時間には刺激側を右耳とした時と左耳にした時とでは差はない.(8) 注意方向(注意を押すスイッチに向けた時と刺激音を聴く方に向けた時)による反応時間の差はない.(9) 反応時間測定の際,同時に脳波誘発反応を測定記録すると,脳波誘発反応の第一陰性波潜時には個人差がなく,少なくとも正常者における反応時間にはmotor periodに左右される要素が大きいと考えられた.(10) 語音(5母音)に対する単純反応時間は,純音に対するそれと差がなく,語音(5母音)間に於ける差もない.(11) 選択反応時間は単純反応時間に比し可成り延長する.即ち左右選択反応時間は約60msec.,語音選択反応時間は約40msec.,周波数選択反応時間は180msec.の延長を示した.(12) 反応時間測定を中枢障害の際の障害部位や性質の判断に応用することは意味があると思われるが,測定条件設定の困難さや個人差等を考えると現段階では臨床への応用は困難な事と思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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