耳鼻咽喉科領域における悪性腫瘍に対する化学療法について : 動注法における制癌剤MDS併用経験
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的:近年制癌剤の開発進歩に伴い,またその使用法として動注法が普及するにおよび頭頸部悪性腫瘍に対する治療成績の向上して来ていることは周知の通りである.しかし動注法を行うに際し,チューブ押入の困難例やチューブ内の閉塞,チューブの逸脱例に遭遇したり,また口内炎ないし口腔内びらんの発生などにより所期の目的を達し得ないという事態もしはしば見聞するところである.そこで私共は動注法の改良を試み,併せて口内炎などの防止に留意し,制癌剤を確実かつ十分な量を一定期間行うことによつて頭頸部悪性腫瘍の治療成績の向上を計らんとした.方法:薬剤として5-Fuを用い,併せて60Co照射も行った.5-Fuは最初2週間は週3回,以後は週2回とし,1回量250mg,総計20回をもつて1クールとし,60Coは1回200r,総計6000r照射しこれを基本治療とした.動注時の混合薬剤としてMDS1200mg,タチオン400mg,フラビタン10mgを混注し,動注開始時と終了時にそれぞれヘバリン1Aを注入し,one shot 法を行った.動注法として浅側頭動脈を利用したが,耳前部切開を比較的下方迄加え,顎部に入る直上部で押管した.押管チューブには蓋付きカットダウンチユーブNo.23を用いた.結果:腫瘍症例19例に動注法を行い,比較的多数にみられた上顎癌症例12例において,動注法ならびに60Co照射を完了したのちに,あるいは途中で手術を施行した4例中2例は広範囲な浸襲があり,術後2ケ月以内に死亡したが生存例2例では基本治療の効果は著しく,癌浸潤範囲も殆んど縮小し適確な手術をなし得ており,術後1年6ケ月においても再発はなく健在である.非手術例では著効,有効合せて8例中5例にみられ,不変2例は手術不能と判定した症例であつたが一時的には有効の状態が続いており,治療後1年以上の生存率は8例中6例(75%)であつた.これらの事から上顎癌治療としての動注法ならびに60co照射の同時療法はかなり主体性をもつた治療指針といえる.上咽頭癌に対しても著しい効果を示し,これまで難治の症例として取り扱われてきた上咽頭癌にも有用な治療法と思われた.注入薬剤にMDS,フラビタオン,タチオンを同時注入し副作用防止につとめたところ,全例において口内炎などは全く発生しなかつた.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
著者
-
小津 雷助
静岡赤十字病院
-
竹山 勇
静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
-
勝見 祐介
静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
-
安藤 良子
静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
-
小津 雷助
静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
-
勝見 祐介
静岡赤十字病院
関連論文
- 第34回 日本平衡神経科学会
- 第33回 日本平衡神経科学会秋季学会
- 1.前庭感覚上皮の受傷性について/2.耳中毒性薬物による内耳病変/3.免疫学的手法による実験的平衡障害/4.前庭性外直筋活動について/5.平衡機能検査成績の経過観察/6.メニエール病長期観察例より得たる知見
- 外歯瘻
- 簡易な視運動性眼振検査の試み
- 耳鼻咽喉科領域における悪性腫瘍に対する化学療法について : 動注法における制癌剤MDS併用経験
- 副鼻腔炎に対するセアプロ-ゼSの薬効評価-1-Placeboとの二重盲検比較試験成績
- タイトル無し
- 上顎癌治療に対する動注法の適応限界
- 192.頭頸部悪性腫瘍に対する免疫療法(第一報)