新しい局面を迎えた古生物地理学
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概要
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生物の地理的分布とその歴史的過程を取扱う生物地理学 (biogeography) は, 古く進化論以前から存在し, 関連科学の新しい知見や理論をとり入れながら発展してきた総合科学的性格の強い学問である。 1960年代の初めごろまでは, 生物地理の研究は, 分類学者が自己の研究の片手間に行なってきた感があり, 取扱う分類群の地理的分布と無機的環境に基づいて区系を考えたり, 化石記録などからその分類群の起源地域と移動経路を推察するのが主な仕事であった。現在でも, 生物地理学を主な対象とする研究機関はなく, 生物地理学者を自認する研究者は外国にもきわめて少ない。また, この学問に独自の理論や確立した研究方法があるわけでもない。<BR>しかし, この約20年の間に生物地理学の重要性は大きく見なおされた。特に1970年代の後半以降には各国で大がかりなシンポジウムが催され, 方法論に関しても活発な議論が展開されている。<BR>小論では, 最近の生物地理学の動向をふまえて, 海洋古生物地理学の一般的問題と, 太平洋地域の中生代以降の海生軟体動物群の地理的分布につき若干の考察を加えたい。これらは少なくとも筆者にとっては比較的最近になって関心がもたれるようになった問題で, まだ深く掘り下げられた研究が行なわれているとは言えない。むしろこれから新しい発展が期待される古生物地理学に対する問題提起と受けとめて貰えれば幸いである。
- 社団法人 東京地学協会の論文
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