「痔核手術の基本―開放術式による結紮切除術―」
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概要
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痔核の手術は,良好な肛門機能を持つ"きれいな"肛門にし,再発させないことが目標である.そのためには可及的に肛門上皮を温存しつつも静脈瘤を十分に郭清することが必要である.当院で施行している開放術式による結紮切除術についてビデオにて紹介する.【術式の実際】手術はサドルブロック麻酔下ジャックナイフ体位で行う.有柄肛門鏡を用いて肛門全周を十分に観察し,脱出の程度,隣同士の痔核のつながり具合を確認しデザインを決定する.肛門開創器(宇井式肛門鏡)を挿入し十分な術視野を得た後に皮切を行う.開放術式では,順調な創治癒のためにドレナージが重要であるが,基本的には,皮切幅は最も広いところで痔核の半分くらいとし,外側は皮下外括約筋をわずかに越えた部位までとする.皮切後,鉗子をかけてこれを牽引しながら鋭的に皮下剥離を進める.まず外痔核が認められるが,これらは切除皮弁側に付けた層で剥離する.外括約筋を確認し,内外括約筋間溝を経て,内括約筋外縁に達する.さらに剥離を口側に向かって進めてゆくが,開創器により内括約筋は緊張しており,内括約筋と静脈瘤の間の剥離層は簡単に見いだすことができる.剥離は口側では内痔静脈叢の上縁,左右は静脈瘤の存在する範囲まで行う.袋状になった皮弁に存在する左右両外側の静脈瘤を,中心部分に集めるように郭清する.郭清した上皮・粘膜をできるだけ残し,中心部分に向かって皮弁を切り狭めてゆく.次いでMcGivneyを用いて,根部ゴム輪結紮を行う.ゴム輪結紮した口側5mmの位置で2-0カットグットを用いて上直腸動脈を刺入結紮する.ゴム輪結紮のすぐ口側で,刺入結紮を行い,それを補強した後に,静脈瘤を付けた皮弁を結紮部位から5〜6mm残した位置で切除する.肛門上皮・粘膜を内括約筋に結節縫合固定する.縫合は外側より根部に向かって進めてゆくが,スキンタグを作らないように皮膚にわずかの張りがある位に縫合固定する.一般的に片側で5針,1つの痔核で10針程度となる.再度有柄肛門鏡で肛門を観察し,同様に第2第3の痔核についても切除を行う,【まとめ】本術式は剥離層を直視下に確認できるため,括約筋を損傷したりすることはなく,出血も少ない.また剥離を十分に行えるので応用範囲が広く,ホワイトヘッド肛門や粘膜脱の場合にも適用可能である.
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