放射状迷路装置内飼育によるマウス作業記憶の評価法 ―課題遂行に及ぼすスコポラミンと遅延時間の効果―
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概要
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プラットホーム(P)と,そこから放射状に延びたアームおよびその先端にギロチンドア(G)を介して設けられたホームケージ(H)からなる装置において,Hには餌が,Pには水が置かれた.ddY系雄性マウス3群をそれぞれ4アーム,6アーム及び8アームの迷路装置の中で1日6時間飼育した.この際,Hに通じるアームは一つだけとし,それをランダムに変え,残りのアームの先端はGで行き止まりとした.この飼育後,他のケージに移し,翌日の試行まで絶食した.1試行は,全てのGが遮断された装置のPに置かれたマウスが全アームを選択し終えるまでとし,最後に選択したアームのGを開いてホームケージ内への進入を許した.試行時に未選択のアームに入ることを正選択,既選択のアームに入ることを誤選択(エラー)とし,課題の遂行は最初のエラーが生じるまでの正選択数(初期正選択数)で評価した.4アーム迷路で3.8以上,6アーム迷路で5以上,8アーム迷路で7以上の平均初期正選択数が3日連続したとき課題を習得したと見做し,これらのマウスを用いてスコポラミン(SCP:0.2mg/kgと0.4mg/kg,i.p.)および遅延時間(1分,2分,4分)の影響について検討した.飼育開始後,4アーム迷路では5日目の試行で,6アーム迷路では4日目の試行で,8アーム迷路では6日目の試行で習得基準に達し,以後そのレベルが持続された.SCP0.4mg/kgは,8アーム迷路において初期正選択数を減らし,4アーム迷路,6アーム迷路,8アーム迷路においてエラー数を増やした.遅延時間の挿入は6アーム迷路,8アーム迷路の初期正選択数を減らしたが,遅延時間の長さに依存した変化は認められなかった.以上の結果は,本装置がマウスに速やかに迷路課題を習得させ,また作業記憶におよぼす薬物効果の検討に有用であることを示唆した.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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伊藤 真紀
岩手医科大学歯学部歯科麻酔学講座
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村井 繁夫
岩手医科大学歯学部OSCE実施委員
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斉藤 弘子
岩手医科大学歯学部歯科薬理学講座
-
村井 繁夫
岩手医科大学歯学部歯科薬理学講座
-
伊藤 忠信
岩手医科大学歯学部歯科薬理学教室
-
小田島 潤一
岩手医科大学歯学部口腔外科学第一講座
-
増田 義勝
岩手医科大学歯学部薬理学講座
-
小田島 潤一
岩手医科大学歯学部歯科薬理学講座
-
増田 義勝
岩手医科大学歯学部歯科薬理学講座
-
斉藤 弘子
岩手医科大学歯学部薬理学講座
-
伊藤 真紀
岩手医科大学歯学部薬理学講座
-
伊藤 忠信
岩手医科大学医学部薬理学教室
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