遺伝的オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損マウスの脳内アミンと行動特性
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概要
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肝臓における尿素サイクルの一酵素オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)活性が遺伝的に極めて低いマウスはsparse-fur(spf)マウスと呼ばれ,離乳前後の被毛は無いか極めて薄い.成長に伴う体重の増加も悪く,spfマウスの体重は正常マウスに比べ13週齢でも有意に劣ったが,22週齢以降では,対照群と同じになった.OTC活性が低い4週齢のspfマウスでは,血中アンモニア濃度が147nmol/mlと対照群の250%に増加し,全脳のグルタミン(Gln)およびトリプトファン(Trp)濃度もそれぞれ176%および152%と著明に上昇した,しかし,この血中のアンモニアの増加は8週齢では認められなくなった.マウスの自発運動量は,正常群では点灯時に少なく夜間に多い二相性の日内変動を示したが,3週齢で高アンモニア血症状態のspfマウスでは,日内変動リズムを示さなかった.このようなspfマウスにおける自発運動量の日内変動の特徴は,週齢が増すにつれ対照群との差は縮まり,8週齢では正常マウスと同じ日内変動パターンを示すようになった.非特異的なセロトニン(5-HT)受容体アゴニストである5-methoxy-N,N-dimethyl-tryptamine(5-MeODMT)をマウス腹腔内に投与すると,head twitchが誘発されるが,5-MeODMT投与2分後から2分間のhead twitchの回数は,3〜5週齢の高アンモニア血症時のspfマウスでは対照群の約50%と有意に少なかった.4週齢spfマウスでは脳内Trp増加に伴う脳内5-HTならびにその代謝回転の増加が認められ,大脳皮質における[<SUP>3</SUP>H]-ケタンセリン結合も減少していた.以上のように,遺伝的OTC欠損マウスの高アンモニア血症状態で発現する自発運動量日内変動の異常やhead twitch反応の抑制など,行動異常の発現機序の一部には,脳内へのTrpの取り込み増加に伴うセロトニンの増加とその代謝回転の亢進,それに起因する5-HT<SUB>2</SUB>受容体のダウンレギュレーションが関係している可能性が示唆された.
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