肝不全用経腸栄養剤 (SF-1008C) の肝性脳症 改善効果に関する研究 ―アンモニア負荷門脈下大静脈吻合ラットにおける血漿中及び脳内遊離アミノ酸濃度,脳内アミン濃度と脳波に対する作用―
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
branched-chain amino acid(BCAA)を多く,aromatic amino acid(AAA)を少なく配合した肝不全用経腸栄養剤SF-1008Cの肝性脳症改善効果を検討した.肝性脳症による昏睡状態のモデルとして門脈下大静脈吻合ラットに10% ammonium acetate(3ml/kg,i.p.)を投与し(PCS群),血中ammonia濃度,血漿中および脳内遊離amino acid濃度,脳内amine濃度,脳波を測定した.PCS群では,擬手術群(Sham群)に比べて血中ammonia濃度,血漿中遊離AAA濃度が有意に増加した.その結果,血漿中BCAA/AAA比は著しく低下した.血漿中遊離amino acid濃度異常に伴い脳内遊離AAA濃度がShamに比べPCS群で有意に増加した.さらに,脳内amine濃度において,PCS群は,Sham群にくらべtryptophan(Trp)及び5-hydroxyindole acetic acid(5-HIAA)濃度が有意に増加し,dopamine(DA)濃度が有意に減少した.しかし,serotonin(5-HT)及びorepinenphrine(NE)濃度に変化は認められなかった.脳波ではSham群に比べPCS群で脳波電位の低下が認められた.SF-1008Cは,増加した血漿中遊離AAA,脳内遊離AAA,脳内Trp,脳内5-HIAA濃度を減少させ,脳波電位の低下を抑制した.一方,良質蛋白質である卵蛋白質のamino acid組成を基とした成分栄養剤ED-ACは,血漿中遊離AAA,脳内遊離AAA,脳内Trp,脳内5-HIAA濃度の減少を認めず,脳波電位の低下も抑制しなかった.これらの結果はSF-1008Cが血漿中遊離amino acid濃度を是正することにより脳内遊離amino acid濃度,ひいては脳内amine代謝,脳波に影響を及ぼしていることを示唆する.さらに,血漿中BcAA/AAA比と脳内BcAA/AAA比との間には,正の相関関係(r=0.9585)が認められ,血漿中遊離amino acid濃度が脳内遊離amino acid濃度を反映していることが示唆された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
清水 剛文
大塚製薬(株)徳島研究所
-
郡 英明
大塚製薬(株)佐賀研究所
-
樫山 英二
大塚製薬(株) 徳島研究所 代謝分析研究部
-
木戸 康博
大塚製薬(株)徳島研究所
-
杉山 光太
大塚製薬(株)徳島研究所
-
中尾 誠仁
大塚製薬(株)徳島研究所
-
須田 武雄
大塚製薬(株)徳島研究所
-
宮本 剛八郎
大塚製薬(株)徳島研究所
-
新谷 成之
大塚製薬(株)徳島研究所
-
樫山 英二
大塚製薬(株)徳島研究所
-
郡 英明
大塚製薬(株)徳島研究所
関連論文
- 新規ドパミン神経伝達抑制剤OPC-14597の体内動態(1)- ラットにおける吸収・分布・排泄 -
- 新規ドパミン神経伝達抑制剤OPC-14597の体内動態(2) - ラットにおける代謝・脳内分布 -
- 277.スパルタスロン(246km走)が生体に及ぼす影響 : 血液生化学的検討 : 生物科学IV (体格・体力,生活など)
- 302.代償性肝硬変患者に対するトレーニングの効果
- 122. 中鎖脂肪酸トリグリセリドの単回投与がエネルギー代謝に及ぼす影響 : 運動生理学的研究I : 第42回日本体力医学会大会
- 42. 長時間運動による分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸の比の低下と中枢機能 : 運動生理学的研究I : 第42回日本体力医学会大会
- 液クロ用生物学的検出器の開発は可能か?
- 肝不全用経腸栄養剤 (SF-1008C) の肝性脳症 改善効果に関する研究 ―アンモニア負荷門脈下大静脈吻合ラットにおける血漿中及び脳内遊離アミノ酸濃度,脳内アミン濃度と脳波に対する作用―