Oxythiamineのラツト末梢神経に及ぼす影響 ―坐骨神経および足底神経における形態的変化―
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概要
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thiamine deficient diet(TDD),および,oxythiamine(OT)投与が,ラット坐骨神経(sciatic nerve:SN),足底神経(plantar nerve:PN)に及ぼす影響を,主に微細構造の面から検索し,同時にthiamine(T)含量を生物学的に定量した.1)一般症状では,TDD飼育時OT投与群(OTD群)での体重増加率の減少が著しく,食欲不振,運動失調を来たし,一部死に至った.OTD群の体重に合わせて,regular dietで飼育したequal weight control群(EWC群)では,飢餓状態を示し,実験後期で急速に食欲不振,運動失調を来たし,一部死に至った.他の実験群においては,目立った神経症状は認められなかった.2)SNおよびPNのT含量は,OT群,OTD群,TDD飼育群(TDD群)において低下を示し,EWC群は,C群と同様な値を示した.3)光顕的観察では,TDD群では明らかな変化を認めず,EWC群でmyelin foldを認め,OTD群ではaxon shrinkage,myelin foldが著明であり,OT群では,これらの傾向が軽度であった.また,それらの変化はSNよりPNで著明に観察された。4)電顕的観察では,TDD群にmyelinated axon(MAx)のmitochondria(Mit)増加を認め,EWC群では,axonの変化に先行して,myelinのfold,oboid,Schwann cell(Sc)の変化が認められた.OT群,OTD群では,程度の差はあったが,axonの変性,すなわち,MAxのMit増加,およびその変牲,vacuole増加,axon shrinkage,neurofirament,neurotubleの崩解,消失が認められた.特に障害の著明なOTD群のMAxには,Mit,vacuole,dense bodyの集積が認められるものもあり,さらに,myelinの解離,myelin foldとoboid形成,Scのrough-surfaced endoplasmic reticulum(rER)の拡大,顆粒増加も著明に認められた.以上の観察から,OTとTDDによる末梢神経障害は,飢餓によるものとは異なり,axonの退行変性が先行し,かつ,その程度がSNよりPNで著明なことから,形態変化が,末梢より求心性に進行する,いわゆるdying-back polyneuropathyであると思われる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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