末梢の電気刺激による中枢神経内セロトニンの変化に関する研究:特に鎮痛効果との関係について
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概要
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マウスの尾根部から加えた持続的な末梢の電気刺激によって,中枢神経内 monoamine 特に 5-hydroxytryptamine(5-HT)がどのように変化するかを,生化学的および行動の両面から検討を加え鎮痛効果を併せて観察した.1)刺激電流 0.45mA,パルス巾 5msec,刺激頻度 20Hz で末梢刺激を2時間行ったとき全脳の 5-HT 量はほとんど変化がみられなかったが,5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)量は有意に増加した.2)末梢刺激は全脳で probenccid(200mg/kg,i.p.)投与による 5-HIAA 量の蓄積を増加し,p-chlorophenylalanine methylester-HCl(pCPA: 500mg/kg,i.p.)投与による 5-HT 量の減少を促進した.probenecid による 5-HIAA 量の蓄積は末梢刺激により大脳皮質,脳幹で有意な増加が観られたが,脊髄では増加の傾向にとどまった.3)末梢刺激群の血漿 corticosterone 量は拘束群と比べて有意に低い値を示した.4)この末梢刺激は 5-mcthoxy-N,N-dimethyltryptamine による head-twitch の発現を著明に増強した.末梢刺激による head-twitch の増加作用は α-methyl-p-tyrosine(200mg/kg,i.p.)の投与では変化がなかったが,pCPA(500mg/kg×2,i.p.)および 5,6-dihydroxytryptamine(40μg/5μl,i.vent.)の投与により消失した.5)この末梢刺激には鎮痛効果があることが hot plate 法および酢酸 writhing 法で確認できた.その鎮痛効果は hot plate 法によると刺激開始1時間後に有意な発現を示し,2時間の刺激終了時まで続いたが,刺激終了1時間後には消失した.6)末梢刺激による鎮痛効果は単独では効果をあらわさない量の L-5-hydroxytryptophan(20mg/kg,s.c.)投与によりさらに増強され,methysergide (6mg/kg,s.c.)投与により完全に消失した.また naloxone(1mg/kg,s.c.)の投与によっても完全に抑制された.7)この実験から末梢刺激によって,中枢神経内 5-HT の代謝回転促進を伴った機能的亢進状態が発現すること,末梢刺激による鎮痛効果の発現には内因性モルヒネ様ペプチドと共に中枢 5-HT 系の関与があることが明らかとなった.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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