クロトン油混合液による痔疾モデル ―吉草酸ジフルコルトロン含有痔疾治療薬 Neriproct と他剤による抗炎症効果の比較―
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概要
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クロトン油混合液をラット直腸肛門部に塗布し起炎させることにより,痔疾モデルを作製することを試みた,クロトン油混合液(水:ピリジン:エチルエーテル:6%クロトン油=1:4:5:10容)0.16mlを浸み込ませた綿球を,軽度のエーテル麻酔下で6週齢ラット(体重1450g)の肛門内に10秒間挿入することが,浮腫と組織所見に基づいて判断された起炎最適条件であった.浮腫は起炎剤塗布後7〜8時間まで直線的に増大し,24時間以上維持された.起炎剤塗布6時間後の解剖所見では,起炎剤塗布部位に肉眼的に均一な,しかも再現性のすぐれた炎症像が認められた.また,光学顕微鏡による組織学的観察により,浮腫,フィブリンの浸潤,炎症性細胞の出現,血管拡張,うっ血,粘膜上皮細胞の中〜強度の壊死などの所見が認められ,痔疾の主症状である腫脹とうっ血などを含む炎症症状に対する薬物の作用を検討するためのモデルとして有用であると考えられた.上記モデルで直腸肛門管部の湿重量と血管透過性を指標として diflucortolone valerate,hydrocortisone caproate,hydrocortisone の抗炎症効果を測定した結果,臨床での血管収縮作用が最強である diflucortolone valerate が最も強い効果を発揮した.この事実は本モデルで炎症症状に対する薬効評価を行なうことが可能であることを示唆している.さらに痔疾治療製剤 Neriproct®,Scheriproct®,Posterisan Forte®,Posterisan®,Borraginol N®の薬効を同様に測定した結果,Neriproct®とScheriproct®は予防効果の測定でほぼ等しく,他剤よりも有意に強い抗炎症効果を示した.治療効果の測定ではNeriproct®は抗炎症効果を示したが,Scheriproct®は効果がなく,その他の製剤ではむしろ炎症を増悪させる作用が認められた.
著者
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岩井 克己
日本シェーリングk.k.研究所
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工藤 大悟
日本シェーリング(株)医薬研究開発本部研究部
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西永 こずえ
日本シェーリング(株)医薬研究開発本部研究部
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西木 克侑
日本シェーリング(株)医薬研究開発本部研究部
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