ラット下顎非咬合切歯萌出率,および切歯硬組織形成に及ぼす 1-Hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)の影響
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概要
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ラット切歯の萌出機序を解明するための手がかりを得ることを主な目的として,象牙質やエナメル質形成阻害作用を示すことが知られている 1-hydroxyethylidene-1,1-bisphosphonate(HEBP)を用い,切歯の萌出率と硬組織形成阻害との間に関連性があるかどうかを調べてみた.実験群の動物にはそれぞれ9,18及び36mgP/kg の HEBP を1日1回背部皮下に7日間注射した.対照群の動物には生理食塩液を投与した.また,9mg P の HEBP 投与群と対照群ラットの1群には,実験期間中にテトラサイクリンを注射し,硬組織に対する標識を行った.さらに,切歯を非咬合状態に保つために上下顎切歯切端部を2日間隔で繰り返し切除し,下顎切歯萌出率の測定を行った.その後,下顎横断切片を作製し,通常の組織学的検索ならびにマイクロラジオグラフィー法による検索を行った.さらに螢光顕微鏡によりテトラサイクリンの象牙質への沈着状態を調べた.HEBP の投与により切歯萌出率は薬物投与開始後2〜3日目以降,有意の低下を示したが,投与量の異なる3群の間に著明な差は認められなかった.HEBP 投与群ラットの下顎切歯では薬物投与後に形成されたと思われる象牙質のヘマトキシリン染色性が著しく低下した.マイクロラジオグラムの観察から,象牙質のヘマトキシリン染色性の不良な部位は石灰化が著しく阻害されていることが判明した.このことは,テトラサイクリンの沈着が著しく阻害されたことからも確認された.また,象牙質基質形成の阻害も認められた.さらにエナメル芽細胞,エナメル基質形成および石灰化などに障害の生じていることが判明した.これらの結果から,切歯の萌出と硬組織の基質形成や石灰化との間にはなんらかの関連性の存在する可能性が考えられるものの,その程度は,それほど大きいものではないことが推察された.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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