正常及び実験的心不全犬の左室径並びにモルモット摘出心筋及び洞房結節の活動電位に対する新規強心薬塩酸Loprinone(E-1020)の作用
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概要
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新規強心薬塩酸loprinone(LP)の麻酔犬における左室内径,収縮末期圧-内径関係及び実験的心不全に対する作用並びにモルモット心室筋及び洞房結節の活動電位に及ぼす影響について検討した.また,麻酔犬における心血管作用を各種強心薬と比較した.麻酔犬において,LP(10〜100μg/kg,i.v.)は用量依存的な左室圧最大立ち上がり速度(LV dP/dt max,心収縮力指標)及び心係数の増加,全末梢血管抵抗の減少を示し,心拍数増加及び血圧低下は軽度であった.この時,左室内径の縮小と内径短縮率の増大が低用量から認められた.収縮末期圧一内径関係はほぼ直線を示し,その勾配はLPにより用量依存的に急峻化し左方ヘシフトした.プロプラノロール大量投与による心不全病態,即ち,LV dP/dt max低下,左室拡張末期圧上昇,左室内径拡大及び内径短縮率低下はLP投与により速やかに改善した.また,心収縮力増強,心拍数増加及び降圧の作用バランスについて数種の強心薬と比較した成績では,LPの心拍数及び血圧への影響は相対的に軽度であった.更に,モルモット摘出右室乳頭筋標本において,LP(10<SUP>-6</SUP>〜10<SUP>-4</SUP>M)は収縮力及びCa<SUP>2+</SUP>-活動電位の最大立ち上がり速度を濃度依存的に増加し,高濃度では活動電位持続時間を軽度短縮した.モルモット摘出洞房結節では,濃度依存的な活動電位持続時間の短縮と緩徐拡張期脱分極速度の増加を示し,これらに伴って拍動数が増加した.この洞房結節へのLPの影響はmilrinoneに比し軽度であった.以上の成績より,LPは強心作用と血管拡張作用に基づく左室サイズの縮小と内径短縮率の増大を示し,実験的心不全に対しても速やかな改善効果をもたらすこと,他剤に比べ血圧及び心拍数への影響が少ないことが明らかとなった.更に,洞房結節活動電位への影響が軽度であることが判明し,心拍数への影響が少ないことの一因であると推測された.
著者
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五十嵐 俊二
エーザイ(株)筑波研究所
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五十嵐 俊二
エーザイ(株)研開情報部
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大原 秀人
Eisai Tsukuba Research Laboratories
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澤田 光平
エーザイ(株)創薬第一研究所
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大原 秀人
エーザイ(株)筑波研究所
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小川 利明
エーザイ(株)筑波研究所
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竹田 三喜夫
エーザイ(株)筑波研究所
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澤田 光平
エーザイ(株)筑波研究所
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