ヒ素代謝に関する研究(第17報)ヒ素の胎仔移行,それにおよぼす解毒剤ならびに飼料の影響に関する研究
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概要
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Closed colony(田村1950)で繁殖させた妊娠ラットにヒ素剤(As<SUB>2</SUB>O<SUB>3</SUB>)を投与し,21日目の胎仔ならびに母ラットの臓器のヒ素蓄積量を原子吸光分光光度計,arsenic analyzer unitで測定した.胎仔の臓器では肝,肝・脳を除いた臓器,脳および胎盤についてヒ素量を測定した,ヒ素剤無投与群にもヒ素の蓄積は認められたが,ヒ素剤投与群では,ヒ素の蓄積は胎盤が最高で,肝,肝・脳を除いた臓器に多く,脳では少なかった.その蓄積傾向は各臓器によって異なり,投与量とは必ずしも平行しない.胎盤ではヒ素の蓄積には一定の限界があり,脳では肝の約1/10以下で胎仔でも極めて微量であった―また母体ではヒ素剤無投与群でも肝,腎,脾,脳のいずれの臓器にもヒ素の蓄積は認められた.ヒ素剤投与群では,腎,脾が著しく増加し,肝,脳の順であった.母体におけるヒ素の蓄積傾向も,各臓器によって異なり投与量とは平行しなかった.ヒ素解毒剤であるDimercaprol,Thioctic acid,L-Ascorbic acidをヒ素剤と同時に投与すると,肝・脳を除いた臓器では統計学的に明らかに,脳では数字的に減少した.しかし胎盤,肝では対照群に比べて影響は認められなかった.母ラットにおいては,腎のヒ素蓄積量が対照群に比べ明らかに減少した.粉乳を主成分とする粉乳飼料で飼養し,ヒ素剤を投与した母ラットから生まれた胎仔の臓器のヒ素蓄積量は対照群と全く差異はなかった.しかし母ラットの腎のヒ素蓄積量は,統計学的に明らかに減少した.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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