火山灰茶園土壌に関する研究(第1報) : 茶園における土壌理化学性の経年的変化
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概要
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南九州地方に広く分布する腐植質火山灰土壌の特性とその生成過程を明らかにするため,樹齢別の茶園,普通畑,林地等の各土壌を供試して,茶園における土壌理化学性の経年推移の様相を検討した。その結果を要約すると次のとおりである。<BR>1 茶園士壌の水分系と透水性には茶園の植生,敷草等の影響がかなり顕著に認められた。<BR>2 供試茶園では粘土の流脱,集積の事実は認められず,むしろ上層部の粘土含量が増加する傾向がみられ,茶園の植生と敷草等の土壌管理が土壌の風化を促進し,浸食防止に寄与しているように推測される。<BR>3 茶園の表層部には有機物の集積が認められ,粘土含量の増加と相まって,この部位の塩基置換容量も高かった。<BR>4 普通畑が茶園に切り替えられると,土壌は急速に酸性化するが,.特に根圏土壌においてそれが著しかった。<BR>5 茶樹の植栽により置換性石灰,苦土は急速に失なわれ,特に苦土の減耗は著しかった。しかし,カリは普通畑より増加し,いずれも茶園の植生と肥培管理方式の特異性に起因するものと考えられた。<BR>6 表層部の全リン酸含量は普通畑より茶園土壌に多く,茶園では経年的に増加するが,その増加の割合は有機態より無機態において著しく,特に樹齢の進んだ茶園表層部にはきわめて多量の肥料リンの固定に基づく無機態リン酸の集積が認められ,このためこの部位のリン酸吸収係数とアルミニウムの溶出度を低めている。<BR>形態別リン酸含量については各土壌間に特別な差異は認められず,いずれもAl型と難溶型が圧倒的に多く,Ca型とFe型は成木茶園の表層部を除き痕跡程度であった。<BR>しかし,有機態リン酸の層位別分布に関し,茶園では第I層に多いが,普通畑では第II層に多いなどの差異が認められた。<BR>7 水溶性アルミニウムの溶出量は普通畑,林地に比し,幼木茶園を含めて茶園土壌からの溶出量が著しく多かった。しかし,酢酸および酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液による溶出量は土壌間に大差は認められなかった。また,以上3種のアルミニウム溶出量は既往の報告にみられるそれより著しく多く,これは気象,土壌条件の差異に起因するものと考えられた。
著者
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