腸管カニューレの装着による豚の消化管における部分消化に関する研究
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概要
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豚の消化管,特に小腸における部分消化を知るために,腸管カニュレを装着した豚を用いて実験を行った.まず,予備実験として腸管カニューレの装着が飼料の消化率等に及ぼす影響を見るため,カニューレを供試豚の空腸上部あるいは回腸末端に1カ所装着し,指標物質(marker)として酸化クロム(Cr2O3)を添加した飼料を用いて,カニューレ装着前後における消化管内のmarkerの通過(滞留)時間および各部位における消化率を測定した.予備実験の結果はつぎの通りであった.1) markerの全消化管内通過時間は空腸上部カニューレ装着豚では装着前後においてほとんど差は認められなかった.回腸末端カニューレ装着豚では装着前に比して装着後の方が若干速く通過した.2) 窒素(N)の蓄積割合(%)はカニューレ装着前に比して装着後の方が低い傾向を示した.3) 飼料の消化率はカニューレ装着前後において大きな差は認められなかった.4) Cr2O3の回收率は装着前後においてもほとんど差が認められなかった.このように回腸末端カニューレの装着により,markerの全消化管内通過速度に若干の変動を生じたが,飼料の消化率については著しい影響はなく,カニューレを装着した豚を用いて部分消化の研究をなしうることが明らかとなった.次に,本実験においては予備実験で用いたカニューレ装着縁を継続的に用い,口腔からそれぞれ空腸上部,回腸末端および肛門までのmarkerの通過時間および各部位までの消化率(部分消化率)等を明らかにする目的で,予備実験と同様の方法でCr2O3を添加した飼料を給与した.その結果は次のようであった.1) Cr2O3の50%通過時間は口腔から空腸上部までが40分,空腸上部から回腸末端までが5時間,回腸末端から肛門までが27.4時間であった.2) 有機物の消化管各部位(上部空腸,回腸末端および肛門)までの消化率は口腔から空腸上部までが7.7%,口腔から回腸末端までが69.0%,消化管全体では81.7%であった.各成分共に小腸(十二指腸は除く)で大部分消化•吸収され,胃•十二指腸ではほとんど吸収がなされていないことが認められた.
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