離乳子豚におけるフマール酸給与が腸内菌叢に及ぼす影響
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概要
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生後21日齢で離乳したLWD交配種の同腹子豚14頭を試験区および対照区の2群に分け,対照区には抗生物質無添加の飼料を給与し,試験区にはそれらの飼料にフマール酸を3%添加した飼料を給与した.給与開始後5週から7週まで,週毎に,両区同数の子豚を屠殺し,消化管内容物のpH,VFA,大腸菌数および嫌気性フマール酸利用菌数を測定した.試験区子豚の消化管内容物のpHは,対照区に比べて,十二指腸,空腸,回腸および結腸において低かったが有意な差ではなかった.DHL平板培地に現れる大腸菌のコロニー数は試験区が対照区に比べて有意(回腸および結腸部位においてp<0.01,盲腸においてp<0.05)に少なかった.Veillonella培地に現れる嫌気性フマール酸利用菌はグラム陰性の小球菌と大型双球菌であり,前者はVeillonella species,後者はMegasphaera sppと判断された.両菌種の菌濃度は,結腸部位のVeillonella sppを除いて,回腸,盲腸および結腸のいずれにおいても試験区が対照区に比べて高かった.しかし有意差は回腸部位のMegasphaera sppのみに有意(p<0.01)に認められた.Megasphaera sppは,いずれの部位においてもVeillonella sppに比べて10-2程度低いレベルの菌数であった.回腸,盲腸および結腸内容物のVFAのモル比は,プロピオン酸が大きな比率を占め,これらの部位に高濃度で存在するVeillonella sppの機能を反映しているとみられた.また,盲腸および結腸部位ではイソ酪酸およびイソ吉草酸の比率が比較的多く,回腸内とは異なる発酵をもつことが示唆された.以上の結果からフマール酸を離乳子豚へ投与することにより,消化管内容物のpHには大きな影響を与えなかったが,腸内菌叢の様相から回腸,盲腸および結腸での大腸菌の濃度を有意に低下させ,嫌気性フマール酸利用菌群の菌濃度を高める傾向を示唆した.
- 社団法人 日本畜産学会の論文
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