土地の「利用」が「所有」をつくる : エチオピア西南部・農村社会における資源利用と土地所有
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概要
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アフリカにおける土地所有の研究には長い歴史がある。本稿は, これまで「慣習法」や「民俗概念」として描かれることの多かった農村社会の土地所有について, その利用形態に着目することで新たな視座を提起することを目指している。調査地のマジョリティであるオロモの土地所有については, 「土地の父」をあらわす abba lafa という用語が重要な民俗概念として注目されてきた。しかし, 調査村の土地を詳しくみていくと, ひとくちに「土地」といっても, そこには利用形態によってさまざまな意味や価値のバリエーションがあり, それらが季節的に変化することもわかってきた。収穫期の短期間だけ労働力が投入される一方で, それほど排他性の高くない個人の土地 (コーヒー林 buna), 耕作期間は世帯単位で排他的に所有・利用されながらも, 収穫後から次の播種までは誰もが放牧できるようになる土地 (畑 maasii), いつでも誰もが牛を放牧できる土地 (低湿地 bakkee), ひんぱんに売買される土地 (集落の土地 ola), 柵で囲まれながらも家族の間で複数の所有の主張が交差する土地 (屋敷地 gee)。すべての土地がひとつの「所有体制」のもとにあるわけでも, abba lafa という固有の「民俗概念」に覆われているわけでもない。土地利用の違いは, 土地所有の排他性やその価値に影響を与えている。本稿は, 土地から生み出される資源の多義性をあきらかにしたうえで, 土地利用のあり方が「所有」という現象をかたちづくる重要な要素であると論じる。
著者
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- 太田好信、浜本満(編), 『メイキング文化人類学』, 京都, 世界思想社, 2005年3月, 314頁, 1,900円(+税)
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