<関係>を可視化する : エチオピア農村社会における共同性のリアリティ(<特集>アカウンタビリティ)
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概要
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本稿は、エチオピア西南部の複数の民族が居住する農村社会を対象に、人びとの複合的な社会関係が、それぞれの文脈をかたちづくる人・モノ・場などの配置をとおしていかに可視化され、理解・説明可能なものになっているのかを明らかにする。これまで人類学が説明の根拠としてきた社会関係にもとづく共同性が、人びとの日常的な実践のなかのアカウンタビリティを手がかりとして実現されていることを示す。IIでは、対象村における複数の社会集団を検討したうえで、民族・宗教・村・集落といったいくつもの「まとまり」が、ゆるやかに重なりながら、境界横断的に編成されていることを示す。人びとは、さまざまな社会的な文脈に応じて、この複数のまとまりのなかから、適切なものを顕在化させている。IIIでは、対象社会でひろく見られる「コーヒー飲み」の慣行について説明したうえで、じっさいにどのようにコーヒーをともに飲む関係が築かれているかを示す。調査村では、コーヒーを飲むときにかならず近隣の者を招く。このコーヒーに招きあう「つながり」が、集落における人びとの<関係>を可視化し、周囲の者も含めて理解可能なものにする重要な装置になっている。IVでは、近隣のもめごとの事例から、コーヒーに招きあう関係が、途絶・再開される過程を分析する。さらに、ある食事の場面における身体の配置から、「コーヒー飲み」の慣行が「ともに食べる/飲む」ことが想起させるアナロジカルな規範であることを示したうえで、日常的な実践のなかで<関係>が実演されている様を描く。Vでは、調査村の事例の固有性をどのように理解することができるか、本稿の議論をふまえてまとめたうえで、さまざまな<関係>が可視化されるその「つながり」の重なりの場としてコミュニティをとらえることが、「社会的なもの」としての共同性を理解することにつながると論じる。
- 2009-03-31
著者
関連論文
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- 太田好信、浜本満(編), 『メイキング文化人類学』, 京都, 世界思想社, 2005年3月, 314頁, 1,900円(+税)
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