同所性心臓移植後に偽性完全房室ブロックによる徐脈を呈した1例
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概要
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症例は31歳,男性.24歳時より心筋炎後の心機能低下による難治性心不全をくり返し,左心補助装置などを経て29歳時に心臓移植が施行された.2010年4月,移植2年後の各種検査施行目的にて入院.心臓カテーテル検査では左室壁運動異常なく,有意な冠動脈狭窄病変も認めなかった.一方,入院時より徐脈が遷延しており,一過性に「完全房室ブロック」と思われる心電図波形を示した.電気生理学的検査(EPS)では,移植されたドナー心および残存するレシピエント心由来と思われる2種類の心房電位を認め,後者はドナー心から電気的に隔離されていた.ドナー心の房室伝導能は正常ながら,著明な洞結節機能不全が示唆された.心房高頻度刺激後には洞停止のため房室接合部補充調律を示し,レシピエント心由来のP波が存在するため,体表心電図上は「完全房室ブロック」様の所見を呈したものと考えられた.本症例は心移植後に合併する徐脈性不整脈にEPSを行い,その主病態が房室ブロックではなく洞結節機能不全と診断でき,貴重と考えられたため報告する.
著者
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縄田 寛
東京大学医学部附属病院 循環器内科
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小野 稔
東京大学医学部心臓外科
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平田 恭信
東京大学大学院医学研究科循環器内科
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永井 良三
東京大学大学院医学系研究科
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今井 靖
東京大学大学院医学系研究科
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絹川 弘一郎
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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杉山 裕章
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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藤生 克仁
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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鈴木 健樹
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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平田 恭信
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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今井 靖
東京大学大学院医学系研究科・循環器内科
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