重篤な運動後急性腎不全(ALPE)を起こした,URAT1遺伝子変異の1例
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概要
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症例は23歳,男性.2008年7月23日,運動会で200mを全力疾走した後,全身倦怠感,上腹部痛,嘔気,嘔吐出現.夕方に近医にて点滴を受けるも症状は改善せず,翌日,当院受診.腎機能障害を認め入院となる.入院時,身体所見の異常は認めず,血液検査で,BUN 23.2mg/dL,血清Cre 2.4mg/dLと高値を示したが,尿酸値は5.2mg/dLと正常範囲内であった.脱水による急性腎不全と考えたが,輸液療法にもかかわらず,嘔気,嘔吐は治まらず,腎機能は悪化する一方であった.高血圧,全身浮腫も出現したため,血液透析療法を施行.同時に,99mTc-MDP骨スキャンを撮影した.その結果,腎内に斑状集積が認められた.透析離脱,腎機能も完全に戻り,退院となった.尿酸値は1.1mg/dLと低値になり,尿酸排泄率(FeUA)56%と異常高値を示した.本症例は腎性低尿酸血症患者にみられた,運動後急性腎不全と診断した.その原因検索のため,遺伝子検査を行ったところ,尿酸トランスポーターURAT1遺伝子,W258XとR90Hの複合ヘテロ接合体との結果であった.本症例はURAT1遺伝子の異常による低尿酸血症で,ALPEを起こしたと考えられる.この異常の10%がALPEまたは尿路結石となり,さらに透析が必要となるのはALPEの21%であり,貴重な症例と考えられた.また,99mTc-MDP骨スキャンは造影剤を使用しないため,ALPEには有用な検査と考えられた.