着床周辺期胚培養の諸問題:自律性と他律性
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概要
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着床周辺期は,胚葉の形成と分化,胎盤の形成など,哺乳類の胚発生の観点から,顕著な変化が起こる時期であり,この時期の胚の全胚培養条件を確立することは,胚発生機構解明や,新しい胚操作技術の開発の観点から重要であろう.一般に,受精から胚盤胞期に至るまでの哺乳類初期胚は,胚の自律性が高く,比較的簡単な組成の培養液で培養できる場合が多いが,着床周辺期になると,胚の栄養要求性は,飛躍的に増大し,他律的な要素が増す.我々は,主としてマウスの着床周辺期胚におけるtrophoblast細胞の分化と増殖機構の解析に焦点を当てたin vitro培養系を工夫し,好成績を挙げている.我々の系では,培養ウエルとして,石英ガラス筒と神経細胞培養用のカバーガラスを組み合わせたものを用い,“FOメディウム” と呼ぶ基本培養液中で培養する.FOメディウムは,EagleのMEMを改変したもので,1.非必須アミノ酸を含有すること,2.システィンの濃度が高いこと,3.アスコルビン酸やコカルボキシラーゼを添加したことなどが特徴である.FOメディウムは,とくに着床周辺期胚におけるトロフォブラスト細胞の増殖や分化の研究に適しているが,ICMの分化と成長も,Witchiの発生段階で11付近(進んだ円筒期胚)までは十分に達することができる.着床周辺期胚の体外培養系は,トロフォブラストの内膜浸潤機構,卜ロフォブラストと内膜の細胞外マトリックス成分や細胞要素との相互作用,胚発生や胎盤形成過程の成長因子やサイトカインによるパラクライン制御機構などの解明に不可欠であると言ってよい.我々は,このような培養系を用い,トロフォブラストによる内膜浸潤機構の解明を試み,現在,興味深い結果を得つつある.
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