基礎から臨床へ―トランスレーショナルリサーチの過去と現在―
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概要
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「トランスレーショナルリサーチ」という用語が「基礎から臨床へ」,すなわち“Bench to Bedside”という基礎研究におけるコンセプトの臨床における実現の可否を検討する「橋渡し研究」との意味で用いられるようになって,すでに15年以上が経過している.抗がん薬,発がん予防の領域に特化して使われ始めたこの用語は,現在では幅広い疾患の薬剤,医療機器,または治療法の初期臨床開発に対しても用いられるようになり,多数の国際誌の創刊により,発表の機会が与えられるようになった.本用語の使用開始時においてはがん領域で浸透していった経緯があるが,日本では“官”主導で,種々の領域の治療法,治療シーズの“学”における研究テーマの採択および臨床試験拠点の整備が行われ,「がん治療」を当初は対象としたが,「がん」に特化することなく,幅広い疾患に対する治療薬,治療法が対象になり,「基礎から臨床へ」の橋渡し研究という命題が,シーズから患者に届くまで,いかなる領域であっても外挿を推進するという環境が醸成されている.総予算額が小さい「小粒」の対処という印象はいなめないが,産官学こぞって新たな治療薬,機器,治療法を世に出そうという試みとして大きく育ってもらいたい.