ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフ質量分析法による雨水及び露水中揮発性有機化合物の定量
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概要
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ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフ質量分析(HS SPME/GC/MS)法による降水中揮発性有機化合物(VOCs)の定量条件を検討した.試料液量16 mLにNaCl 3.5 gを添加し,SPMEファイバー〔100 μm PDMS(polydimethylsilozane)〕への抽出温度40℃,20分間保持で最大感度が得られた.最適条件を用いて,ハロゲン化炭化水素17種と単環芳香族炭化水素6種の合計23種について標準溶液1 ppbの繰り返し再現性,検量線の直線性,検出下限,定量下限及び実試料への添加回収率を調べた.1,2-ジクロロエタンを除くVOCs 22種の標準溶液1 ppbにおける変動係数は10% 未満であり,検出下限は0.02 nM(ジクロロメタン)から0.30 nM(ベンゼン)であった.雨水及び露水試料への添加回収率は,ジクロロメタンを除くVOCs 22種について80% から120% の範囲にあり,HS SPME/GC/MS法は雨水及び露水中VOCsの定量に適用可能であった.本法を東京都西部(日野市)で採取した雨水と露水に適用した結果,塩素化炭化水素6種,単環芳香族炭化水素5種の合計11種のVOCsが検出された.雨水及び露水ともに,塩素化炭化水素に比べて単環芳香族炭化水素の濃度が高く,単環芳香族炭化水素の中ではトルエンが最高濃度を示した.観測期間中のトルエンの体積加重平均濃度は雨水で3.31 nM(n=39),露水で5.21 nM(n=38)であった.雨水及び露水中VOCsの実測濃度は,大気中VOCs濃度とヘンリー定数から算出した計算値の数万倍にも達し,大気中VOCsが雨水及び露水に促進吸収されていることが明らかになった.
著者
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井川 学
神奈川大学工学部
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大河内 博
神奈川大学工学部応用化学科
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大河内 博
神奈川大学工学部
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Okochi Hiroshi
Faculty Of Urban Environmental Sciences Tokyo Metropolitan University
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佐藤 絵美
東京都立科学技術大学大学院工学研究科インテリジェントシステム専攻
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大河内 博
東京都立科学技術大学大学院工学研究科インテリジェントシステム専攻
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