妊婦に合併した肝細胞癌に対して妊娠を継続し肝切除を施行した1例

概要

論文の詳細を見る
症例は42歳，女性でB型肝炎にて近医通院中であった．妊娠15週に肝腫瘍を指摘され，当科紹介となった．画像診断にて，肝細胞癌と診断されたが，妊娠継続・挙児希望が強く，肝細胞癌に対して肝切除を希望された．十分なインフォームドコンセントを行い，手術のリスク・肝癌再発のリスクも理解された上で妊娠を継続しつつ，妊娠19週に肝2亜区域切除（S5及びS6）を行った．術中・術後を通じ，母子ともに経過良好で術後第10病日退院となった．術前より血清AFP・L3分画は高値であり，術後妊娠の経過とともに血清AFP・L3分画高値持続を認めたが，術後5カ月，妊娠39週に帝王切開にて無事出産，AFP・L3分画ともに正常化した．術後36カ月経過するが再発なく，母子ともに異常なく経過している．妊娠合併の肝細胞癌は非常に稀な病態であり，その多くは妊娠中絶後もしくは出産後に治療が行われており，これまで文献上，予後は非常に不良とされている．今回妊娠を継続したまま外科手術を行い，長期間良好に経過している症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．