鉄を視点とするアスベスト発がんの解明と予防·診断·治療への応用の可能性
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概要
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目的.アスベストの発がん機構を解明する.方法.アスベスト(UICC: クリソタイル,クロシドライト,アモサイト)の物理化学的な性質を再検討する一方,培養細胞や実験動物個体にアスベストの投与を行い,生物学的性質を詳細に評価した.結果.ラジカル発生の触媒能はアモサイト>クロシドライト>>>クリソタイルであり,それは種々のキレート剤の存在で修飾を受けた.貪食細胞以外に,中皮細胞や腺癌細胞もアスベスト繊維を取り込み,核内にいたることを観察した.supercoiled plasmid DNAを使用して,各アスベストの2本鎖DNA切断能を検討した.鉄含量の高いアモサイトとクロシドライトで2本鎖切断を認め,繰り返し配列部位やG: C塩基間で切断しやすいことが判明した.ラット腹腔内に各アスベスト繊維を投与すると,全アスベスト投与グループで,中皮細胞で酸化ストレス増加を認めるとともに特に脾臓において鉄沈着を認めた.結論.クリソタイル腹腔内投与も中皮腫を発生する事実と考えあわせると,アスベスト発がんにはアスベストに含まれる鉄のみならず,他の機序で発生する過剰鉄も重要な役割を演じていることが示唆され,中皮腫発生の予防標的として期待される.
- 日本肺癌学会の論文
著者
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豊國 伸哉
名古屋大学大学院医学系研究科病理病態学講座生体反応病理学
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豊國 伸哉
名古屋大学 大学院医学系研究科生体反応病理学・分子病理診断学
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豊國 伸哉
名古屋大学大学院医学系研究科病理病態学講座生体反応病理学/分子病理診断学
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