概念分析によるロールシャッハ解釈
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概要
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本論の目的は、ロールシャッハ・テストにおける概念分析を提唱し、その理論と応用について論じることである。ロールシャッハ・テストの一般的な解釈法は、データ収集、コード化、スコアリングを経て量的解析を行う、いわゆるカウンティング・メソッドである。だがこの方法では、ロールシャッハ状況が単にデータを収集するための場にすぎないことになり、目の前にある充実すべき臨床場面が空洞化をきたすことは自明である。カウンティング・メソッドにおいて実質的な解釈が始まるのは、反応を数値化した後であり、反応はそれ自体としては直接的な解釈的意味を持たないのである。それに対して、後期ウィトゲンシュタインの考え方を応用したものであるが、臨床的直観が重視されるこの概念分析では、反応の解釈はすでにロールシャッハ状況において行われる。この手法の特徴は、既存の評定カテゴリーにはこだわらずに、反応が成立する条件をそのつど現れては消滅する反応の形成過程に即して理解することにある。さらに、ロールシャッハ状況における解釈と事後的な解釈を有機的に結合するために、解釈の暫定的価値と不確定性を特徴とした、入れ子ループ・モデルを提唱した。
著者
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