数理社会学はパラダイムを必要とするか
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概要
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数理社会学あるいは社会学にパラダイムが存在しているかどうかを判断すること自体が危うい試みであるが、研究者はコミュニケーションを可能にする共有知を自覚していることも事実である。パラダイムという用語の概念的な厳密さには深入りせず、ここでは、少し広めに、認識の場におけるいくつかの分岐点において、研究者の部分集合によって持続的に共有され、認識のアウトプットを導きあるいは制約する概念、理論、方法、さらには意識的あるいは無意識的な信念あるいは価値意識の複合体としておく。 結論からいえば、緩やかなパラダイムなしには社会科学の発展はありえないが、現在は必ずしも十全なパラダイムは存在せず、よりよいパラダイムを求める個別パラダイムの相克のなかにあり、またそうであることが望ましいといえるだろう。問われるべきはその相克の様相をできるだけ明らかにすることであり、本稿は、その課題に少しばかりの発言をするものである。 この作業のためのさしあたりの視点として、科学認識の基本的な2組の様式の分岐点を置くことにする。ひとつは実証的か規範的か、今ひとつは経験的か理論的かである。これらの区別を説明する必要はないと思われるが、「実証的」という用語については注意が必要である。ここで実証的とは経験的研究(計量的研究)に限定されず、理論研究(演繹理論)も含むものとする。その上で、理論と経験的研究を識別する。行動、態度、社会状態(不平等)であれ、その状態の特性を明らかにし、その状態の出現のメカニズムを明らかにすることは、理論にも経験的研究も共通であるが、アプローチが異なる。ただし、この2組の単純化した区別は、議論のなかでもう少し複雑な関係にあることが明らかになるだろう。
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