広汎性発達障害の神経科学と心理学
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概要
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カナーとアスペルガーによる自閉症とアスペルガー症候群についての古典的記述からすでに半世紀以上が経過した. これら広汎性発達障害 (Pervasive Developmental Disorders ; PDD) の疫学, 症候学, 経過と予後に関する知識は飛躍的に増加したが, エビデンスを有する医学的治療はいまだ末確立で, そのための根本病態の解明は喫緊の課題である. 科学的検証に耐えうる心理仮説の構築は, 遺伝子や分子とは違ったレベルでの病態理解に重要であり, 現在最も注目されているのが, バロン-コーエンが提唱した mind-blindness theory (心盲仮説) である. その中心は心の理論仮説というもので, ヒトは他者の信念, 意図, 欲求, 感情など, 直接には見えない心の存在を仮定して, その内容を推定して円滑な対人コミュニケーションを行うが, 自閉症ではうまく機能していないという. 機能的MRIの発展により, 心の理論の遂行に伴う内側前頭皮質や前部帯状皮質の活性化と, PDDにおけるこれら領域の機能不全や非定型的活動が判明した. しかし同一性保持の欲求や知覚過敏性, 突出した能力の出現など, 心の理論仮説では説明できない特徴も多く, 心盲仮説 (心の理論仮説) はよく構築され魅力的ではあるものの, PDDの病態すべてを説明する理論ではない. 現象論にとどまらない心理仮説の完成には, ヒト神経回路綱の発達と機能発現など, 神経科学的知見を取り込むことが必要と思われる.
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