<Articles>What Does Google Street View Bring about? -Privacy, Discomfort and The Problem of Paradoxical Others-
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概要
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本論文の目的は、Google Street View(以下、GSV)が惹き起こした問題がどのような問題であるのかを明らかにすることである。インターネット上で利用できるサービスの一つに、Google 社のGSVがある。GSVにはプライバシー上の問題があるとされる意見が根強く、国ごとにさまざまな対応が為されている。しかし日本では、サービスイン当初にこそ反対運動や署名運動が展開されたものの、「GSVは非合法とは言えない」という総務省の発表の後、反対運動がなりを潜めているのが現状である。本論文の第1節では、GSVが惹き起こしていると言われるプライバシー侵害への懸念に対するGoogle Japanの対応を整理し、GSVの存在が依然として一部の人々に不快感を惹き起こしていることを指摘する。次に第2節で、この不快感の正体について考察する。まず、インターネット社会において存在確率が上がった「パラドクシカルアザー」という特殊な他人の存在を指摘する。GSVやその他SNS等のインターネットサービス上に、ある人のプライベートな情報を他人がアップロードすることが一般的になることによって、私たちはパラドクシカルアザーが実際にいることを知ったり、実際にはいなくてもいるかもしれないと思ったりする。このことにより、自律と健全な人間関係という二つの価値が侵害され、不快感が生じる。この二つの価値は、以前からプライバシーと関係していると言われている。続く第3節では、GSVの存在によって感じられる心理的不快感が、プライバシーの権利ではなく価値の侵害に由来していることを論証する。そのために、 GSV問題におけるプライバシー権、プライバシー、不快感、価値の4つの関係を明確にする。そして、Googleがプライバシーの侵害をしているというよくある指摘に対し、Googleが提出した反論がうまくいかないこと、プライベートな情報を利用するサービスの存在がパラドクシカルアザーがいるという予感をますます増加させること、そして、SNSの普及によってリアルタイムに位置情報が流通するようになると、心理的不快感のみならず実害にもつながることを示唆する。
- 2012-08-09
著者
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