柿渋による木材への金属固着性の向上と防腐効力
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概要
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柿渋と金属イオンとのキレート能を利用した、木材への金属固着性および防腐効力を検討した。また、柿渋に浸せき後、長期間の養生あるいは紫外線照射を行った場合の防腐効力を検討し、以下の結論が得られた。1)木材に対する金属固着性は、鉄>鋼>亜鉛>ニッケルの順で優れていたが、金属塩の処理濃度が高まるにつれて、金属残存率は低下した。柿渋に含まれるタンニンと金属イオンから形成されるキレートが、木材への金属固着性に及ぼす効果は、金属塩の種類によって異なった。また、柿渋と硫酸銅の2段処理は、木材への金属固着性の向上に効果が認められ、他の金属塩との2段処理の場合よりも有効であった。2)柿渋の1段処理は、オオウズラタケ腐朽に対して防腐効力を有するが、雨水等の溶脱作用により効果は低下した。カワラタケ腐朽に対する柿渋の防腐効果は、ほとんど無かった。紫外線の影響により、両腐朽に対する柿渋の防腐効力は低下した。また、柿渋に浸せき後、室内等で十分養生することにより、防腐効力は僅かながら向上した。3)柿渋と硫酸銅あるいは硫酸ニッケルとの2段処理は、オオウズラタケ腐朽およびカワラタケ腐朽に対して防腐効力を有し、柿渋の1段処理よりも効果に優れていた。柿渋と硫酸ニッケルの2段処理では、溶脱+揮散の耐候操作により両腐朽に対する防腐効果がほとんど失われた。それに対して、柿渋と硫酸銅の2段処理では、柿渋および硫酸銅の1段処理よりも防腐効力に優れ、カワラタケ腐朽よりもオオウズラタケ腐朽に対する方が有効に作用した。4)柿渋と金属塩による金属固着性ならびに防腐効力との間には相関があり、この効果は金属の種類によって異なることが明らかとなった。
- 奈良県森林技術センターの論文
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