東日本太平洋沖地震大津波が三陸沿岸地域におけるスギ林針葉の赤褐変化に及ぼした影響
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概要
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2011年3月の東日本大震災では太平洋沿岸に大津波が襲来し沿岸の海岸林をほぼ壊滅させた。また震災直後に健全だった津波浸水後背地スギ林では時間経過と共に各地で針葉が赤褐化する塩害に起因すると考えられる現象が拡大した。ここでは三陸沿岸津波浸水後背地のスギ針葉変色の実態を現地踏査により把握しその原因を検討した。三陸沿岸の塩害範囲は津波到達箇所と概ね一致した。但し針葉の赤褐化は5月上旬まで認められなかったことから休眠期から生育期に移行した後に変色が顕在化したとみられた。スギ林の津波到達箇所では土壌への海砂堆積や混入、土壌pHやECの上昇、水溶性および交換性Na+濃度の極端な増加が認められた。この結果は、海水が浸水した土壌にはNa+が過剰に付加され、それが塩として集積したことを示唆する。つまり土壌に過剰付加されたNa+は、そこに生育する樹木体内への塩分の過剰吸収、過剰塩分による養分の拮抗的吸収阻害、樹体内外の浸透圧差減少による水ポテンシャルの低下を誘引し、結果としてスギの針葉が変色した可能性が考えられた。日本の森林の多くは急傾斜地にあり、土壌改良材施用、耕起・砕土・弾丸暗渠施工などの除塩作業を農地同様に実施することは困難であるが、梅雨や台風等のまとまった降雨によって除塩を期待できる可能性は残る。津波浸水地における森林再生に向けて森林土壌の継続調査による土壌化学性の改善状況を把握することが重要となる。
- 2012-06-00
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