低カリウム飼料の給与が泌乳牛の尿量低減化に及ぼす効果
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概要
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粗飼料および濃厚飼料にカリウム(K)含量の少ない飼料資源を積極的に活用した実用的な低K飼料を泌乳牛4頭に給与し、生産性を損なうことなく効果的に尿量を減少させることができるか検証した。粗飼料源にイタリアンライグラスサイレージおよびアルファルファヘイキューブを使用した対照飼料区(K含量1.80%)と、K含量を低減するために粗飼料源をコーンサイレージとし、配合原料にもビール粕を利用した低K飼料区(同1.19%)の2区を設定した。両飼料区の乳成分率と成分消化率には差がなかったが、乾物摂取量は低K飼料区よりも対照飼料区の方が少なく、これを反映して乳量も対照飼料区の方が少なかった。この違いは対照飼料区で使用したイタリアンライグラスサイレージの嗜好性が悪かったことに起因するものであったが、少なくとも低K飼料の給与が乳牛の採食性と生産性に悪影響を与えることはなかったものと判断された。糞中への水分排せつ量は両飼料区で違いがなかったが、尿中への水分排せつ量は対照飼料区の15.6kg/日から、低K飼料の給与によって9.2kg/日まで有意に減少した。一方、低K飼料区は乾物摂取量と乳量が対照飼料区よりも多かったにもかかわらず、総水分摂取量が対照飼料区と変わらなかったことから、低K飼料区では尿量の減少に伴って自発的な飲水量の減少があったと推察された。加えて、血漿中のミネラル濃度と浸透圧および尿素濃度は両飼料区間に差がなく、低K飼料給与時も電解質と窒素の恒常性は保たれていたと考えられた。これらの結果はK低減による泌乳牛の尿量減少が生理的な反応であったことを示唆している。また、両飼料区の固形塩も含めた総ナトリウム(Na)摂取量に有意な差は観察されず、K摂取量減少が代償的なNa摂取量の増加を引き起こすことはなかった。
- 農業技術研究機構畜産草地研究所の論文
- 2010-03-00
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