シリーズ「近年の土砂災害」
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概要
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近年の土砂災害。2000年6月より始まった三宅島雄山の噴火活動は、それ以前まで約20年周期で活動してきた形態と異なり、約2,500年ぶりとなるカルデラを形成する活動となった。8月末までの7回の噴火により約1,100万m3の火山灰を噴出し、現在でも噴火口から二酸化硫黄(SO2)を主成分とする火山ガスを放出している。そのため、三宅島の住民約3,800名は9月2日の避難指示を受けて全島避難し、その避難生活は2005年2月まで4年5ヶ月の長期間に及んだ。全島避難中、山頂付近を中心として大量の樹木が枯死し、三宅島の森林面積4,000haのうち、およそ60%の2,500haに被害が生じた。保水力を失った地表面に堆積した火山灰は年間約3,000mmもの降雨によって表面が侵食され現在でも泥流の発生源となっている。このため復旧においては山腹付近における早期の緑化が求められたが、当時三宅島における緑化はいくつかの点において困難な状況であった。1つ目として激しい表面侵食によって種子が定着する前に流されてしまうこと。2つ目として火山ガスに耐性のある植物種を選定する必要があること。3つ目として三宅島は離島という隔離された環境にあるため、種子が大量に確保できる外来草本による緑化を行うことは島固有の生態系に影響を与えると考えられることである。本稿では以上の問題点を踏まえ、著者らが2000年の三宅島噴火活動後からこれまでに実施してきた土砂生産・流出の実態調査及び植生回復に向けた復旧対策についてとりまとめたものを報告する。
- 水利科学研究所の論文
- 2010-04-00
著者
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