促成イチゴの高設栽培における連続出蕾性に与える定植後の培地昇温抑制と施肥時期の効果
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概要
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イチゴの高設栽培では、高温が主因と考えられる連続出蕾性の低下による収穫の中休み現象、奇形果の発生などの果実生産上の弊害が危惧されている。そこで、実用性を考慮した培地の昇温抑制機構を既存の低コストタイプの高設栽培装置に組み込み、昇温抑制程度とイチゴの連続出蕾性を主とした花房発達に与える昇温抑制効果を検証した。また、定植直後の施肥時期が連続出蕾性に及ぼす影響も併せて検討した。1)昇温抑制機構による昇温抑制程度は、8月下旬から9月上旬の定植後の高温期において、夕方以降の午後5時から9時にかけて、2.5〜3.0℃であった。根の成育に悪影響とされる25℃以上の培地温度の時間帯を半減させることができた。また、地床栽培よりも培地温度を低く維持することができた。2)昇温抑制による効果として、'紅ほっぺ'において一次側花房の出蕾が、出蕾日にして3日(平均すると5日)早まり、出蕾の斉一性も高かった。培地の昇温抑制を実施しなかった場合、頂花房で奇形果の発生が観察された。3)'紅ほっぺ'と'さちのか'において、花芽分化前の株への窒素供給は、花芽分化を遅らせ出蕾も遅れるが、花芽分化後は速やかに窒素供給が行われることで、出蕾・開花が早く、その後の花房の発達も良好となることが確認できた。4)温度依存性のある緩効性肥料では、高温により窒素成分の溶出が多くなり、花芽分化前の窒素供給を制限できず、窒素過多により花芽分化が遅れ、結果として出蕾も遅れた。5)培地の昇温抑制方法および定植時の肥培管理を改良することで、高温や窒素過多による花芽分化の遅延を回避し、連続出蕾性を高め、収穫の中休みを軽減した栽培技術の確立が可能である。
- 農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センターの論文
- 2008-03-00
著者
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