診療情報の保護と有効活用 : 電子健康保険証の導入を射程として
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概要
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近年の医療費高騰を抑制し、より適切で安全な医療を患者に提供するために、患者の診療情報の電子化を推進する世界的な動きがある。本稿では、患者の自己情報コントロール権に対する配慮が厚く、医療領域における法整備に関しても国民的議論を尽くす傾向があるドイツにおける電子健康保険証導入の状況を参照し、わが国において診療情報の電子化を推進し、すべての国民がその恩恵にあずかれるような法的環境整備を探る一助としたい。ドイツでは、情報技術と通信技術を駆使した医療管理体制eHealth の整備の第一歩として、eGK の導入を開始した。そこでは、被保険者が医療従事者に対して個々に自己のデータの利用に関して同意をしたときにだけ、eGK に由来するデータが収集され、処理、利用され、そして読み取られるシステムづくりが行われた。eGK への格納データに関しても、患者の意思が反映できるようになっている。これらのドイツの状況は、患者への医療の効率化、高度化には有益であるが、患者の診療情報の研究への利用に関しては、問題が多いように思われた。In order to control the escalating health care cost in recent years and to provide patients with more suitable and safer medical and health services, there is a worldwide trend which promotes the computerization of patients' medical information. In light of the electronic health insurance card introduction in Germany, this paper aims to explore a suitable legal environment which promotes the computerization of personal medical information in Japan, and allows all citizens to enjoy its benefits. In Germany, the electronic health insurance card was introduced as the first step of the high-tech medical administrative system based on information and communication technology. The system developed in Germany, allows the collection, processing, use and retrieval of personal medical information only when health insurance holders' consent is obtained by health workers. Patients have the right to determine what personal medical information is stored in electronic health insurance cards. While in the current German situation medical and health services effectiveness and advancement might be of benefit to patients, the use of personal information in research presents several challenges.
- 2012-12-28
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