北米地域における(非)遺伝子組換え農産物の生産流通動向
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概要
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本稿の目的は,アメリカ・カナダにおける現地調査(2000年8月)を踏まえ,両国における遺伝子組換え(以下,GM)作物の近年の規制動向および生産流通動向を明らかにすることである。特に,生産流通に関しては,日本において需要が拡大している非遺伝子組換え(以下,Non-GM)農産物の生産流通とその分別流通管理が生産国であるアメリカ農業にどのような影響をもたらしているかを明らかにする。 アメリカにおいては,(トウモロコシを除き)大豆や綿花において2000年も引き続きGM農作物の生産が拡大した。但し,その生産地域はアメリカ国内において地域差が存在し,特にトウモロコシにおいて顕著である。GM農作物に対する規制に関しては,連邦食品医薬品局において商業化前における事前通告の義務付けなど規制強化の方向が見られる。 日本におけるGM関連食品の義務表示化(1999年8月決定)を契機としてNon-GM農作物への需要が増大している。これに対応して,アメリカ国内においてもIPハンドリング(分別流通管理)への取り組みが拡大し,流通関連企業において混入防止のための様々な取り組みがなされている。具体的には,穀物の出荷に関して,カントリー・エレベータを迂回し,直接リバー・エレベータヘ搬入してバージに積み込むとともに,エクスポート・エレベータにおいても貯蔵サイロへの保管を行わないといった手法が見られた。また生産者段階での厳密な作付情報管理のため情報技術が積極的に援用されるなどの取り組みが見られる。なお,トウモロコシに関しては,2000年9月に発生したスターリンクの混入事件の影響により,今後の生産流通において分別流通管理が一層求められるであろう。 カナダに関しては,世界第3位のGM生産国であるにも関わらず,アメリカやEUと比較してGM農作物関連の規制制度や生産流通情報が限られているので,全体的な概要把握を主眼とした。カナダにおけるGM農作物の生産に関しては,キャノーラで65%,大豆で25%,トウモロコシで35%程度がGM品種となっている。キヤノーラ油に関しては義務表示対象品目に含まれていないこともあって,Non-GMキャノーラのIPハンドリングの取り組み事例は見られなかった。カナダでのIPハンドリングは,一部の日本向け大豆の事例に留まっていると見られる。但し,IPハンドリングに関しては,硬質赤色春小麦での経験もあり,市場需要があれば,キヤノーラでもIPへの対応は技術的に可能と見られている。
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