薔薇茎蜂の研究 : 第一報 生活史及び習性
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概要
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The observation on the Japanese rose-stem borer, Neosyrista similis (MOCSARY), an important pest of the rose, described in the present paper, were carried out by the author in Fukuoka, Kyushu in 1935 under the kind guidance of Professor TEISO ESAKI of the Kyushu Imperial University. The present paper represents a part of the a u thor's studies of Neosyrista similis (MOCSARY) and contains descriptions of the life-history and habits. A second report on the morphology, natural enemies and the methods of control will be published in the future.本篇は著者が日本に於ける蕎薇の重要害蟲の一なる蕎薇莖蜂 Neosyrista similis (MOCSARY)に就いて昭和10年以降に福岡に於て觀察せる結果を報告せるものにして, 九州帝國大學教授江崎悌三博士の指導になるものである。本篇は又著者の研究せる事項の中同種の生活史及び習性に關して記述したもので, その形態, 天敵及び防除法に關しては更に將來第2報として報告したいと思ふ。本種は1箇年1世代を經過する。産卵は4月下旬に始まり5月初旬まで繼續する。卵は1箇づつ新梢の髓部に産附される。1雌の産附する卵の數は兩明かでない。雌は産卵に適する位置を愼重に撰定するや, 先づその頭部を下に向け, 腹部を體の下面に引き入れ, 鋸状の産卵管を新梢内に插入して孔を穿つ。産卵の位置としては新梢の中央部を特に好む。産卵をなす前には雌はその産卵器を以て, 新梢の周圍に3乃至8箇所の傷痕を與へるが, 之等の傷痕は結局その新梢の周園を總て圍むことになる。之は植物體の導管を全部切斷して榮養の通過を遮斷する爲である。雌は通常雄よりも數日遲れて羽化する。産卵は午前10時より午後3時までの間に行はれ, 日照多き温暖なる日には活動が敏速である。卵は楕圓體又は腎臟形を呈し, 乳白色である。卵期は7乃至10日間である。幼蟲は瑠化するや直ちに喰害を初める。先づ新梢の内部の柔軟細胞組織を食しつつ, 一定の長さまで屈曲せる隧道を穿つ。それより幼蟲は方向を轉換して表皮を殘すまでに周國の組織を食害しつつ下向し, 坑道内には排泄物が充填される。著者の觀察によれば幼蟲の發育期間は約1箇月であつて, 幼蟲は成熟すれば, その大腮を以てその周壁を切る。その爲にこの咬傷の上部は殆ど憶き外皮のみを以て連結するのみとなり, 或は離れ落ちることもある。この咬傷部の下方は食害物を以て充填し, その下方に體より僅かに長き腔所を殘し, ここに薄き繭を營む, 繭は纖弱であつて灰色を呈する。幼蟲は繭内に於て多期まで過し, 冬來りて始めて前蛹となりて越年し, 翌年3月下旬に蛹化する。蛹化後約20日を經過すれば成蟲となつて勿化する。成蟲は繭よりその上方の充填物を咬み破りて通路を穿ち脱出する。
- 九州帝國大學農學部の論文
九州帝國大學農學部 | 論文
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