西瓜蔓割病(麥凋病)に關する病理學的研究 VI. : FUSARIUM NIVEUM 培養陳久液が植物に及ぼす有害作用に就て
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
It is reported by many authors that in the staled solutions of wilt causing fungi are accumulated certain poisonous substances which give some injurious effects upon host plants. Concering this point, some studies with the culture solution of Fusarium niveum were undertaken.Fusarium niveum の陳久培養液を以て西瓜の切枝を培養する時は, 西瓜の葉の柔組織ことに葉の周縁に於ける部に壞死部を生ずる。而して莖葉全體としては麥凋することがない。かかる中毒症状は西瓜のみならず大豆, 棉, トマト, オジギサウ等の場合に於ても認められる處であり, この内トマト, オジギサウは中毒症状著しく, 大豆, 棉及び西瓜は比較的輕微である。而してこの中毒乍用はピクリン酸の中毒作用に類似し, 常該被害局部柔細胞の壞死となつて現はれるのである。培養陳久液中に生ずる毒物は, 寄主に特異性を持つものでなく, その一部には酵素性なる物質をも包含する模樣であるが, その大部分は透析性耐熱性にして而も不揮發性なるものである。而してこれは木精によつて抽出せられる。西瓜の蔓割病の麥凋發現を説明するにあたり, 所謂毒物説によつて説明をなし難き諸例を列擧した。即ち a) 先端部のみの發病の場合, b) 一側面又は二三枝のみの發病の場合, c) 發病の初期には目中のみ麥凋し, 早朝は恢復す, d) 發病初期にはその莖の先端部を切つて水に插す時は恢復す, e) 培養陳久液による寄主の麥凋現象は, 麥凋病に於ける麥凋現象とは異る, 1) 寄主體内に於ける毒素の質及量の不明, である。この内 c)d)e) は同一事實を異方面より述べたものであり, これに對しては本文前牛によつて明かで, 蔓割病に於ける麥凋現象の發現は柔組織の水分の缺乏による膨壓の減退であるに反し, 毒素の場合はこれら組織の中毒壞死によるものである。a)b) については二三氏の説明があり,新根又は側根に病菌が寄生した結果毒素の上昇を來したるによるものとせられてゐるが, これに對し著者は數個の反對例證を塞げ, その説明の不備を指摘し, 毒素説によつては,かかる部分枯死を説明し難しとなした。著者は又腐敗組織による自家中毒の説に對しても反對例證を擧げてゐる。即ち著者は麥凋の病理を説明するに常り漫然たる毒物説に反對してゐるのである。
- 九州帝國大學農學部の論文
九州帝國大學農學部 | 論文
- 日本産 Rhus 屬樹種の果實に於ける蝋の含有量並に收量に關する組織の定量的研究
- 土壌の各層に於ける肥料の分布と胡瓜及び茄子の成育
- 攀纒植物の機巧に就いて
- 航空機用木材の物理的性質(第一報)
- 日本産重要木材の摩擦係數