小説とその下部構造 ―E.M.フォースター、「コロヌスからの道」―
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概要
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小説研究へのアプローチとして、ここ数年、入門期の学生に分析批評という立場から「どう小説を読むか」ということを教えてきた。しかし、作品を言語世界に閉じ込めて論じる完全な分析批評は、無味乾燥な語ゲームに陥りがちであり、学生たちに真に適合するのか疑問を抱き続けてもきた。最近は、作品に焦点を絞りつつも、作品外の言語及び社会の文化に目配りした形で議論し、それを自らの実践的批評による教育法として捉えてきた。たとえば、 E.M.フォースターの「コロヌスからの道」は面白い分析材料を提供してくれる。これは、初学者にもわかるように、ソフォクレスの『コロヌスのオイディプス』を下敷きとして成立している作品だからである。純粋な分析批評の枠内では、明らかに、フォースターの狙った効果を捉えきれないであろう。より良い小説読解法のために、一つのアプローチの具体例を示してみたい。
- 奈良教育大学教育研究所の論文
- 1999-03-01