「格差」と「合理性」 : 非正規労働者の不利益取扱いを正当化する「合理的理由」に関する研究(<特集>「労働」と「格差」)
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概要
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本稿は, パートタイム労働者, 有期契約労働者, 派遣労働者等の非正規労働者と正規労働者の間の待遇格差をめぐる法的取扱いについて, 比較法的な観点から分析を行い, 日本の立法論・解釈論に対する示唆を得ることを目的としたものである. 特にここでは, 正規労働者と非正規労働者の平等取扱いについて先進的に規制を行ってきたフランスと, 判例・学説による議論の蓄積が豊富なドイツを分析対象とし, そのなかでも鍵を握る概念である, 非正規労働者の不利益取扱いを正当化する「客観的な理由(合理的な理由)」に焦点をあてて考察を深めた. そこからは, ①パートタイム労働者, 有期契約労働者, 派遣労働者などの非正規労働者をめぐる問題を一体として捉え, 総合的・連続的に対策を講じることが重要である, ②「合理的な理由のない不利益取扱い(差別的取扱い)の禁止」という法原則を導入し, 「合理的な理由」の判断において実態の多様性を取り込んだ柔軟な判断をすることが適当である, ③日本的な特徴といわれているキャリアや勤続年数の違いなどはフランスやドイツにおいてもこの法原則のなかで考慮に入れられており, この法原則を日本に導入することを困難とする特殊な事情とはいえない, ④この法原則(「合理的な理由」の判断)のなかに労使合意の重要性を取り込むときにはその危険性や正統性についての考慮が必要である, といった示唆が得られた.The purpose of this article is to analyze the legal principles on the equal treatment between regular workers and non-regular workers (for example, part-time workers, fixed-term contract workers and temporary workers) and to have some lessons to Japan from the viewpoint of comparative study of law. Especially, it focuses on the contents of the objective grounds to justify different treatments between regular workers and non-regular workers in French Law and German Law. Through this work, we can observe the flexibility of the application of the legal principles on the equal treatment between regular and non-regular workers to adapt them to various situations of these workers. These analyses give some important lessons to the political and/or theoretical discussions on the revisions of the Part-Time Work Act, the Worker Dispatching Act and the formulation of a Fixed-Term Labor Contract Act in Japan.
- 2011-03-15
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