幼児の文の読解に及ぼす絵の効果
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概要
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本研究の目的は、幼児の文の読解に及ぼす絵の効果を検討することであった。そのために2つの実験が行われた。まず、実験Iにおいては、幼児が文を読んで、その内容を理解する時に、絵を対提示することが、いかなる効果を持っているかについて検討した。被験者は保育園年長児で平仮名読字力調査を行って、読字力が高水準・低水準の者、各40名を選出した。実験には、文だけ書かれたカードと、文に絵を添えたカードの2種類が用いられた。材料と読字力水準の要因によって、被験者は次の4群に分けられた。(1)読字力高・絵有り群、(2)読字力高・絵無し群、(3)読字力低・絵有り群、(4)読字力低・絵無し群。これらの4群に12枚のカードを提示した後、文の内容の理解度を査定した。その結果、絵の無いカードを提示した場合には、読字力高群は低群の者に比べて、有意によい成績を示したが、絵の有るカードを提示した場合には、読字力にかかわりなくよい成績を示した。このことから、幼児が文の読解をする際に、絵は有効な手がかりとして用いられると言える。実験Iにおいては、文の内容を表わす絵を提示したので、被験者がどの程度文に依存し、どの程度絵に依存しているかは、明確にはとらえられなかった。そこで、実験IIでは、文とは異なった内容を表わす絵を用いて検討した。その結果、読字力が高水準の者では、文に頼って、その内容を理解することが多いが、同時に提示された絵の情報も利用していること、また、読字力が低水準の者は、絵の情報への依存度がより大きいこと、が明らかにされた。
- 奈良教育大学教育研究所の論文
- 1984-03-23