幼年期における数概念の形成について ― 論理的認識と数的認識 ―
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概要
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本研究は、子どもの論理的認識と数的認識とのかかわりを明らかにすることによって、数概念形成のプロセスを解明しようとしたものである。前稿に引き続き本稿では、とくに両者のかかわりについて分析し、これを C. J. Brainerd の結果と比較することを試みた。ここで明らかになったことは、次の通りである。(1)対関係の論理的認識が、数的認識と深くかかわりをもつ。(2)論理的認識では、順序系列化が同値関係、順序関係の認識と深くかかわりをもつ。(3)順序系列化の認識は、数的認識と深くかかわりをもつ。(4)対関係、順序系列化の各論理的認識と数的認識との間にある程度類似性が見てとれる。(5)長さについての論理的認識と数的認識との間に深いかかわりかあることか推察される。(6)推移律の理由づけと円形配置における同数の認識とが従属的である。(7)求和が数的認識と深くかかわりのあることはもちろんのことであるが、論理的認識、とりわけ順序的認識と深いかかわりがある。(8)数的認識のうち、1対1対応・増加と数の比較・和の認識が、対関係を含めて論理的認識に先行する傾向がある。(9)順序関係の推移律の認識は、数的認識に概ね先行するが、個数比較の認識に対してはむしろ遅れる。(10)1対1対応・増加の理由づけと順序関係の推移律の理由づけは、比較的似かよった発達傾向を示す。(11)Brainerdの結論「(1)順序づけ、(2)自然数への能力、(3)対応づけ」の先後関係は、必ずしも検証できず、それに反する現象もいくつか観察できた。
- 奈良教育大学教育研究所の論文
- 1981-03-23