戦後釜石製鉄所における熟練の再編 : 保全職場の事例(<特集>地方産業都市の興隆と安定 : 希望学・釜石調査からの考察)
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概要
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本稿では, 1950年代から80年代にかけて釜石製鉄所に勤務した一保全工のオーラル・ヒストリーと賃金記録を素材としながら, 暗黙知から形式知へという熟練の再編をともないつつ進展した釜石製鉄所保全職場における企業特殊熟練の形成過程と, それをうながしたインセンティブのあり方を検討した. その結果, 高度経済成長末期の釜石製鉄所保全職場において, 秘伝的熟練にもとづく事後保全から, 改良保全と年間修理計画表の作成・運用を軸とした生産保全へという, 保全体制の大きな転換が生じていたことがわかった. そしてその変化の担い手は, スタッフ技術員(職員層)ではなく, 職長クラスの現業員であった. 経営側は作業現場(地区整備部門)に大きな権限をあたえ, かつ現業員に対して昇進制度と年功賃金による長期的なインセンティブと, 成果主義的な色彩を帯びた賞与による短期的なインセンティブを付与することで, 企業特殊熟練の形成をうながしていったのである.The purpose of this article is to present the process of the reorganization of skills from apprenticeships to firm-specific skills in Kamaishi Steel Works, the oldest steel works in Japan, by focusing on the Maintenance Section of the iron workshop. Through this work, I intend to add some insights into the background and implications of the formation of firm-specific skills in post-war Japan. The data used for this research are an oral history and the wage record of a maintenance worker who worked at Kamaishi Steel Works form 1950s to 1980s. He was one of the leaders of the correct maintenance movement and created productive maintenance system in the steel works. The management gave greater authority to the shop floor (Local Maintenance Division), and granted long-term incentives represented by the career promotion systems and the seniority-based salary systems, and short-term incentives through the bonus systems which had a characteristic of meritocracy. By so doing, the management encouraged and promoted the formation of firm-specific skills.
- 2010-03-24
著者
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