幼年期における数概念と論理的認識についての研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今回の調査の目的は、幼年期のこどもの数的認識と論理的認識の年令に応じる発達のようす、及び両者間のかかわりの一端について研究することにある。このため、奈良教育大学附属小学校第1学年の児童36名、同附属幼稚園の5才児、4才児、3才児各学級の園児合計79名、総数115名を対象にして、次の各項目、1.対関係 2.多い・少ない 3.1対1対応・増加 4.数の比較・合計 5.減少 について、個人面接調査を行った。得られた結果のうち注目すべきものは、次の通りである。(1)小学校第1学年、幼稚園5才児学級、同4才児学級、同3才児学級の4クラス間の有意差が多く見られたが、中でも4才児以上と3才児の間の有意差が目立った。(項目1、3、4)これは、この年令段階において認識の発達の1つのふしがあることを示唆する。(2)対関係という論理的な認識(項目1)と数認識(項目4)との間に関連があることが検出された。このことは数認識の発達の過程あるいは要因と論理的認識とのかかわりにおいて、より多面的な考察が必要であることを示唆する。(3)この時期の5才児クラスの園児の集団においては、数的な課題を解決しようという志向において、他の年令層に比べて特異な構成がうかがわれる。(項目3、4、5)(4)与えられた場面を数的に焦点化して見ることは、これらの年令のこどもにとっては自発的なものではなく、そうした見方は意図的に与えられることが必要である。(項目2)(5)小学校第1学年児童の反応には、年令的というよりも学習による効果が顕著な場合がある。(項目5)
- 奈良教育大学教育研究所の論文
- 1980-03-23