日本語学習者は英語をどう開音節化するか : 英語を母語としない初級学習者の場合
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概要
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日本語学習者が、外国語が外来語として日本語にとりこまれる際の日本語化規則を習得する過程を調べるために、初級の日本語学習者(17名)を対象に、「英語を日本語の外来語としてかたかなで表記する」という48の英単語からなる調査を実施した。学習者の回答をパーソナルコンピュータ上でデータベースに入力し、正解率、誤答例などを日本語化規則ごとに出力した。本稿では、このうち、開音節化に関する規制をとりあげ、考察する。開音節化規則の平均正解率は56.43%であり、音韻に関する規則の中で、もっとも高かった。しかし、「かたかなで表記する」という調査方法そのものが、開音節化と直結しているため、学習者が本当の意味で日本語の音韻体系の習得に成功しているかどうかについては、本調査の結果からは判断することはできない。次に、開音節化規則が適用された36語、延べ55箇所(=チェックポイント)に対する回答に基づいて、S-P表を作成し分析したところ、次の3点がわかった。1)17名の学習者は、開音節化規則について等質と考えられる。2)問題項目としての開音節化規則も、ほぼ等質と考えられる。しかし、[t / d / dʒ / tʃ / m] の開音節化規則については、異質であることが観察される。3)前舌母音に後続する[k]、[tʃ / dʒ / ʃ / θ ] 、音節末の[ŋ]、音節末以外の[p]、[u] が添加される[t]、は習得しにくい。以上のことから、音韻論上の制約、また、年代的に古い外来語などにしか適用されない生産性の低さ、などの点で、開音節化規制において例外といえる規則は、習得の面においても、習得しにくい、言い換えれば、有標(marked)な規則であることが示唆される。また、本調査の被験者間にみられた習得の傾向が、縦断的な習得のプロセスを反映しているとすれば、日本語学習者は「基本的な開音節化規則→子音による例外規則→語彙による例外規則」の順で、開音節化規則を習得していることが推測される。This study focuses on the question of how Japanese learners create an open syllable to, adapt English words into Japanese loanwords. A test consisted of 48 English words required them to spell out in katakana, and it was conducted on 17 non-English native speakers who enrolled am elementary Japanese class. The answers were fed into a personal computer, from which I generated a Student-Problem Score Table (S-P table). Through careful observation of S-P table I identified the following three points: 1) In spite of the differences of their native languages, answers of 17 subjects in this study have same features. 2) Though most of rules about creation open syllables have same features, the rules related to consonants [t / d / dʒ /tʃ / m] were different. 3) It is possible to say that the rules on the following consonants are hard to acquire to Japanese learners: [k] which is followed the front vowels, [tʃ / dʒ / ʃ / θ], [ŋ] which placed at the end of syllable, [p] which placed head or middle of syllable and [t] which follows [u]. From these findings above, we may say that the marked rules considered "marked" from a phonological point of view can be also treated as "marked" from an acquisition point of view. It is also suggested that the variation among the subjects of this study reflects a longitudinal process of the acquisition of Japanese.
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